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年のせいじゃない!クッシング症候群の症状と治療法
  • 年のせいじゃない!クッシング症候群の症状と治療法

    2019年12月16日

    獣医師 加藤由生子

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    愛犬が太ってきてなかなか痩せない、毛が薄くなってきた、最近なんだか元気が無い・・・これって歳のせいかな?と思えるちょっとした変化。
    もしかしたらホルモンに関する病気かもしれません。

    今回はそんなホルモンの病気の一つであるクッシング症候群について説明したいと思います。

    コルチゾール

    クッシング症候群とは

    クッシング症候群はホルモン疾患のひとつです。
    腎臓の傍にある副腎という器官の皮質部分から分泌されるコルチゾールというホルモンが過剰に分泌されることによって様々な症状を引き起こします。

    コルチゾールは糖や脂質・タンパク質の代謝に関わり、血圧の調節や抗炎症作用・抗アレルギー反応作用といった生体に必要な役割を担っています。
    このコルチゾールは正常時では脳下垂体から分泌される副腎皮質刺激ホルモン(以下ACTH)の刺激によって分泌されます。

    そしてACTHはさらに脳の上位にある視床下部という部分から分泌されるCRHというホルモンで調節されています
    この系統のいずれかで異常が起き、結果、コルチゾールの過剰分泌が起きることで様々な症状が引き起こされることをクッシング症候群と呼びます。

    クッシング症候群の種類

    クッシング症候群の中でもACTHが過剰に分泌されることが原因となるものをACTH依存性クッシング症候群と言います。

    一方で副腎に問題がある場合ACTH非依存性クッシング症候群と言います。
    主に前者は下垂体の腫瘍、後者は副腎の腫瘍によるもので、犬の場合は8割以上が下垂体腫瘍によると言われています。

    また、副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)を長期または過剰投与した場合にもクッシング症候群になることがあります。
    これを医原性クッシング症候群と呼びます。

    人や猫では10万人に1人と稀な病気ですが、犬は500頭に1頭と比較的高い割合で発生します。中~高齢での発生が多いです。

    どんな症状になるの?

    クッシング症候群の症状はさまざまですが、主に以下の症状があります。

    • 多飲多尿
    • 多食
    • 体重の増加
    • 腹部の膨満
    • 脱毛(体の側面・左右対称)や皮膚の黒ずみ
    • 皮膚が薄くなる
    • 呼吸が荒くなる(パンティング)
    • 足腰の弱まり

    症状が進んでくると糖尿病や高血圧、血栓症、膵炎、皮膚炎や膀胱炎などの感染症といった命に関わる合併症も見られるようになります。

    超音波検査

    どうやって診断するの?

    主に次の三つで診断します。

    • 血液検査(血球計算・生化学検査・コルチゾール測定・ACTH刺激試験など)
    • レントゲン
    • 超音波検査

    血液中のコルチゾールの値が高い場合、その原因が下垂体か副腎かを調べるためにレントゲンや超音波で副腎の大きさを見ます。
    副腎腫瘍の場合、二つある副腎の片方が腫大している場合が多く、逆に下垂体の腫瘍が原因の場合は副腎の大きさは二つとも正常か両方とも腫大していることが多いです。

    原因が下垂体にあると思われたら全身麻酔をかけてCTで下垂体の腫瘍の大きさを検査することになります。
    ACTH刺激検査などのホルモン検査ははっきりとした結果が出ないこともありますので、これらの検査結果を総合的に見て診断を行います。

    治療方法は?

    副腎腫瘍や下垂体腫瘍の外科的な摘出や放射線治療はあまり現実的ではありません。
    代わりに薬によってコルチゾールの量を調節し、症状を緩和させていくのが一般的な治療となります。
    根本的な治療では無いため、生涯お薬を飲み続ける事になります。

    医原性のクッシング症候群の場合はステロイド剤が原因とはいえ持病のコントロールのために服用している場合が多く、持病の症状との折り合いをつけつつ減薬していくことになります。

    同じくホルモン疾患である甲状腺機能低下症は中高年の発症が多いです。
    体重の増加や脱毛、元気消失など初期症状で似通っているところがあるため鑑別診断が必要になることもあります。
    また、互いに発症の引き金となることもあります。

    さいごに

    身体の様々な部位に作用するホルモンの異常による症状は一見すると関連性の無い変化と思われがちです。

    愛犬の「いつもと違う」に気付いてあげられるのは飼い主さんです。
    普段から愛犬の食事の量や水を飲む量、歩き方、被毛の状態を気にかけてあげることが病気の早期発見に繋がるでしょう。

愛犬が太ってきてなかなか痩せない、毛が薄くなってきた、最近なんだか元気が無い・・・これって歳のせいかな?と思えるちょっとした変化。
もしかしたらホルモンに関する病気かもしれません。

今回はそんなホルモンの病気の一つであるクッシング症候群について説明したいと思います。

コルチゾール

クッシング症候群とは

クッシング症候群はホルモン疾患のひとつです。
腎臓の傍にある副腎という器官の皮質部分から分泌されるコルチゾールというホルモンが過剰に分泌されることによって様々な症状を引き起こします。

コルチゾールは糖や脂質・タンパク質の代謝に関わり、血圧の調節や抗炎症作用・抗アレルギー反応作用といった生体に必要な役割を担っています。
このコルチゾールは正常時では脳下垂体から分泌される副腎皮質刺激ホルモン(以下ACTH)の刺激によって分泌されます。

そしてACTHはさらに脳の上位にある視床下部という部分から分泌されるCRHというホルモンで調節されています
この系統のいずれかで異常が起き、結果、コルチゾールの過剰分泌が起きることで様々な症状が引き起こされることをクッシング症候群と呼びます。

クッシング症候群の種類

クッシング症候群の中でもACTHが過剰に分泌されることが原因となるものをACTH依存性クッシング症候群と言います。

一方で副腎に問題がある場合ACTH非依存性クッシング症候群と言います。
主に前者は下垂体の腫瘍、後者は副腎の腫瘍によるもので、犬の場合は8割以上が下垂体腫瘍によると言われています。

また、副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)を長期または過剰投与した場合にもクッシング症候群になることがあります。
これを医原性クッシング症候群と呼びます。

人や猫では10万人に1人と稀な病気ですが、犬は500頭に1頭と比較的高い割合で発生します。中~高齢での発生が多いです。

どんな症状になるの?

クッシング症候群の症状はさまざまですが、主に以下の症状があります。

  • 多飲多尿
  • 多食
  • 体重の増加
  • 腹部の膨満
  • 脱毛(体の側面・左右対称)や皮膚の黒ずみ
  • 皮膚が薄くなる
  • 呼吸が荒くなる(パンティング)
  • 足腰の弱まり

症状が進んでくると糖尿病や高血圧、血栓症、膵炎、皮膚炎や膀胱炎などの感染症といった命に関わる合併症も見られるようになります。

超音波検査

どうやって診断するの?

主に次の三つで診断します。

  • 血液検査(血球計算・生化学検査・コルチゾール測定・ACTH刺激試験など)
  • レントゲン
  • 超音波検査

血液中のコルチゾールの値が高い場合、その原因が下垂体か副腎かを調べるためにレントゲンや超音波で副腎の大きさを見ます。
副腎腫瘍の場合、二つある副腎の片方が腫大している場合が多く、逆に下垂体の腫瘍が原因の場合は副腎の大きさは二つとも正常か両方とも腫大していることが多いです。

原因が下垂体にあると思われたら全身麻酔をかけてCTで下垂体の腫瘍の大きさを検査することになります。
ACTH刺激検査などのホルモン検査ははっきりとした結果が出ないこともありますので、これらの検査結果を総合的に見て診断を行います。

治療方法は?

副腎腫瘍や下垂体腫瘍の外科的な摘出や放射線治療はあまり現実的ではありません。
代わりに薬によってコルチゾールの量を調節し、症状を緩和させていくのが一般的な治療となります。
根本的な治療では無いため、生涯お薬を飲み続ける事になります。

医原性のクッシング症候群の場合はステロイド剤が原因とはいえ持病のコントロールのために服用している場合が多く、持病の症状との折り合いをつけつつ減薬していくことになります。

同じくホルモン疾患である甲状腺機能低下症は中高年の発症が多いです。
体重の増加や脱毛、元気消失など初期症状で似通っているところがあるため鑑別診断が必要になることもあります。
また、互いに発症の引き金となることもあります。

さいごに

身体の様々な部位に作用するホルモンの異常による症状は一見すると関連性の無い変化と思われがちです。

愛犬の「いつもと違う」に気付いてあげられるのは飼い主さんです。
普段から愛犬の食事の量や水を飲む量、歩き方、被毛の状態を気にかけてあげることが病気の早期発見に繋がるでしょう。

著作者プロフィール

獣医師 加藤由生子

2019年12月16日

獣医師 加藤由生子

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