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犬のキズ以外の怪我について
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    気をつけていてもちょっとしたことで犬は怪我をしてしまうものです。
    切り傷などの一般的な怪我の他にも、思いもよらない怪我をすることもあります。

    ここでは切り傷以外に犬のまわりにどんな危険があるのかをご紹介します。

    暖炉の前に座る犬

    やけど

    やけどには主に熱によるやけどと、化学物質によるやけどの2種類があります。

    熱によるやけど

    ドライヤーの近づけ過ぎ、ストーブ、熱い蒸気に触った、料理中の熱湯が誤ってかかることが原因でおこります。
    過去に、作りたてのお味噌汁を食卓に運ぶ途中に足元に愛犬がじゃれて、誤って背中にひっくり返してしまったという事故もありました。

    化学物質によるやけど

    化学物質によるやけどは、腐食剤(配管クリーナーなど)やガソリン、融雪剤などに触れることが原因でおこります。
    特に融雪剤は、冬場の散歩で気がつかないうちに踏んでいることもあるので、注意が必要です。

    やけどの重症度

    やけどは皮膚をどれだけ損傷したかにより第1度~第3度に分類されます。

    第1度

    皮膚の表面が損傷した状態です。やけどをした部分は分厚くなって赤くなり、痛みがあります。
    ただし、犬の皮膚は人間と比べて血管が少ないため、人間のやけど程、赤みは目立ちません。

    この段階であれば比較的軽傷のため、3週間程度で治癒します。

    第2度

    皮膚の奥の真皮まで損傷した状態です。激しい炎症や水ぶくれが起こります。
    細菌感染や、患部を引っ掻いてできる新たな傷から守る治療も必要です。

    治癒には数カ月かかり、痕が残ることもあります。

    第3度

    神経を含んだ皮膚のすべてを損傷した状態です。
    皮膚の壊死を伴い、状態によっては損傷部の切除などが必要になります。

    対処法

    熱が原因の場合

    熱が原因で愛犬がやけどをした場合はすぐに冷やして下さい。
    冷やすことにより、やけどの範囲が広がることを食い止めることができます。
    やけどしてから2時間以内に冷やすのが何よりも重要です。

    その後、落ち着いたらかかりつけの動物病院を必ず受診しましょう。
    またやけどが広範囲の場合は命にかかわりますので、早急に受診をしましょう。

    化学物質が原因の場合

    化学物質が原因の場合は、すぐに大量の水で洗い流して下さい。
    その後、愛犬がなめないように注意しながらかかりつけの動物病院を必ず受診しましょう。

    寒い場所にいる犬

    凍傷

    犬は人間よりも寒さに強いイメージがありますが、極端に寒い場所や長期間寒い場所にさらされると、犬でも凍傷をおこします。(※1)
    毛の量が少なく、血流も少ない耳、しっぽ、陰嚢(精巣を入れる袋)おっぱいなどの末梢部で多く起こります。

    凍傷は犬種による差が大きく、寒い国が原産の犬(シベリアンハスキーなど)は、耳やしっぽ・お腹など末梢部も毛にしっかり覆われていて、毛の量も多いので体温を逃がさないようになっています。

    それに対し、暑い国が原産の犬(チワワなど)は、末梢部の毛が薄く、毛自体も体温を逃がしやすいように薄くなっています。
    このような犬種が寒い環境にさらされると、凍傷の危険性があります。
    洋服を着せてあげて、寒い日は長時間外に出さないようにしましょう。

    凍傷を起こした皮膚は青白く、感覚が低下して冷たくなっています。
    やけどと同様、皮膚の奥までの損傷具合で重症度が分別されます。

    対処法 

    かかりつけの動物病院を受診することをお勧めします。
    血流の回復後に保護の処置が必要だからです。

    ソファに座り込む犬

    ねんざ・打ち身

    ソファや車から飛び降りて着地に失敗したり、散歩中に側溝の網に引っ掛かったりして、ねんざや打ち身になってしまうケースが多いです。

    多くの愛犬では、ねんざや打ち身の傷を負うと、痛めた足をかばって歩いたり、地面に着けず挙げたままになり、腫れや熱感を伴うこともあります。
    症状は傷を負った直後ではなく、半日ほどたってから出ることが多いです。

    レントゲン検査では大きな異常は認められないことがほとんどですが骨折や脱臼の可能性もあるため、念のためレントゲンを撮ってもらうことをお勧めします。

    治療方法

    消炎鎮痛剤を投与して安静にするのが重要です。
    特に、動物病院で消炎鎮痛剤を注射してもらうと痛みが緩和されるので、愛犬は今まで通り、走ったり飛び降りたりしようとします。

    しかし、まだ炎症自体は治まったわけではないので、数日は散歩も最小限に控え、安静を心がけましょう。
    この他の注意点としては、消炎鎮痛剤は種類によっては腎臓に負担がかかることがあります。

    内臓が弱かったり、愛犬が高齢の場合は、投与の前に血液検査で腎臓の機能を調べてもらうことをお勧めします。 

    まとめ

    今回ご紹介した怪我は切り傷などと比べると見つけづらいことが多いです。
    飼い主は愛犬の怪我のサインを見逃さないように注意が必要です。

    また、愛犬が思わぬ怪我をしないように、家の環境を、今一度確認してみてはいかがでしょうか。

    参考文献

    ※1小動物外科手術(上) 松原哲船 監修  LLL.Seminar

気をつけていてもちょっとしたことで犬は怪我をしてしまうものです。
切り傷などの一般的な怪我の他にも、思いもよらない怪我をすることもあります。

ここでは切り傷以外に犬のまわりにどんな危険があるのかをご紹介します。

暖炉の前に座る犬

やけど

やけどには主に熱によるやけどと、化学物質によるやけどの2種類があります。

熱によるやけど

ドライヤーの近づけ過ぎ、ストーブ、熱い蒸気に触った、料理中の熱湯が誤ってかかることが原因でおこります。
過去に、作りたてのお味噌汁を食卓に運ぶ途中に足元に愛犬がじゃれて、誤って背中にひっくり返してしまったという事故もありました。

化学物質によるやけど

化学物質によるやけどは、腐食剤(配管クリーナーなど)やガソリン、融雪剤などに触れることが原因でおこります。
特に融雪剤は、冬場の散歩で気がつかないうちに踏んでいることもあるので、注意が必要です。

やけどの重症度

やけどは皮膚をどれだけ損傷したかにより第1度~第3度に分類されます。

第1度

皮膚の表面が損傷した状態です。やけどをした部分は分厚くなって赤くなり、痛みがあります。
ただし、犬の皮膚は人間と比べて血管が少ないため、人間のやけど程、赤みは目立ちません。

この段階であれば比較的軽傷のため、3週間程度で治癒します。

第2度

皮膚の奥の真皮まで損傷した状態です。激しい炎症や水ぶくれが起こります。
細菌感染や、患部を引っ掻いてできる新たな傷から守る治療も必要です。

治癒には数カ月かかり、痕が残ることもあります。

第3度

神経を含んだ皮膚のすべてを損傷した状態です。
皮膚の壊死を伴い、状態によっては損傷部の切除などが必要になります。

対処法

熱が原因の場合

熱が原因で愛犬がやけどをした場合はすぐに冷やして下さい。
冷やすことにより、やけどの範囲が広がることを食い止めることができます。
やけどしてから2時間以内に冷やすのが何よりも重要です。

その後、落ち着いたらかかりつけの動物病院を必ず受診しましょう。
またやけどが広範囲の場合は命にかかわりますので、早急に受診をしましょう。

化学物質が原因の場合

化学物質が原因の場合は、すぐに大量の水で洗い流して下さい。
その後、愛犬がなめないように注意しながらかかりつけの動物病院を必ず受診しましょう。

寒い場所にいる犬

凍傷

犬は人間よりも寒さに強いイメージがありますが、極端に寒い場所や長期間寒い場所にさらされると、犬でも凍傷をおこします。(※1)
毛の量が少なく、血流も少ない耳、しっぽ、陰嚢(精巣を入れる袋)おっぱいなどの末梢部で多く起こります。

凍傷は犬種による差が大きく、寒い国が原産の犬(シベリアンハスキーなど)は、耳やしっぽ・お腹など末梢部も毛にしっかり覆われていて、毛の量も多いので体温を逃がさないようになっています。

それに対し、暑い国が原産の犬(チワワなど)は、末梢部の毛が薄く、毛自体も体温を逃がしやすいように薄くなっています。
このような犬種が寒い環境にさらされると、凍傷の危険性があります。
洋服を着せてあげて、寒い日は長時間外に出さないようにしましょう。

凍傷を起こした皮膚は青白く、感覚が低下して冷たくなっています。
やけどと同様、皮膚の奥までの損傷具合で重症度が分別されます。

対処法 

かかりつけの動物病院を受診することをお勧めします。
血流の回復後に保護の処置が必要だからです。

ソファに座り込む犬

ねんざ・打ち身

ソファや車から飛び降りて着地に失敗したり、散歩中に側溝の網に引っ掛かったりして、ねんざや打ち身になってしまうケースが多いです。

多くの愛犬では、ねんざや打ち身の傷を負うと、痛めた足をかばって歩いたり、地面に着けず挙げたままになり、腫れや熱感を伴うこともあります。
症状は傷を負った直後ではなく、半日ほどたってから出ることが多いです。

レントゲン検査では大きな異常は認められないことがほとんどですが骨折や脱臼の可能性もあるため、念のためレントゲンを撮ってもらうことをお勧めします。

治療方法

消炎鎮痛剤を投与して安静にするのが重要です。
特に、動物病院で消炎鎮痛剤を注射してもらうと痛みが緩和されるので、愛犬は今まで通り、走ったり飛び降りたりしようとします。

しかし、まだ炎症自体は治まったわけではないので、数日は散歩も最小限に控え、安静を心がけましょう。
この他の注意点としては、消炎鎮痛剤は種類によっては腎臓に負担がかかることがあります。

内臓が弱かったり、愛犬が高齢の場合は、投与の前に血液検査で腎臓の機能を調べてもらうことをお勧めします。 

まとめ

今回ご紹介した怪我は切り傷などと比べると見つけづらいことが多いです。
飼い主は愛犬の怪我のサインを見逃さないように注意が必要です。

また、愛犬が思わぬ怪我をしないように、家の環境を、今一度確認してみてはいかがでしょうか。

参考文献

※1小動物外科手術(上) 松原哲船 監修  LLL.Seminar

著作者プロフィール

獣医師 飯塚美幸

麻布大学獣医学部獣医学科卒業。 現在は埼玉県三郷市の動物病院にパート勤務しています。 動物病院での仕事の際には、飼い主様の気持ちに寄り添って治療を進めていけるよう心がけています。 同じ志で、記事もお伝えしたい思っております。 猫好きな男児2人の子育て中です。

2020年01月20日

獣医師 飯塚美幸

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